StatsBeginner: 初学者の統計学習ノート

統計学およびR、Pythonでのプログラミングの勉強の過程をメモっていくノート。たまにMacの話題。

四半期GDP成長率の「年率換算」はどれぐらいブレるのか?

GDPは「四半期速報値」というのが作成されており、前の四半期との比(たとえば2019年7-9期と10-12月期の比)を4乗したものが、「年率換算」の成長率として報道などで使われている。最新の速報では、2019年10-12月期の実質GDPが、年率換算でマイナス7.1%と大幅な減少を記録したと報道されていた。


この、四半期成長率を4乗した値というのは、トレンドが安定していればもちろん年率の成長に一致するが、短期的な変動が4乗されるわけなので、けっこう大きく上下する。

以下は、ちょっとわかりにくいが、実質GDPの
-年間(暦年)の成長率[黒い線]
-四半期成長率を「年率換算」したもの(前期比の4乗)[赤い線
-四半期GDPを4倍したものと、前年の年間GDPの比[青い線
をグラフにしたものだ。四半期はいずれも季節調整済み。


f:id:midnightseminar:20200309150830p:plain


データは、暦年GDPについては平成30年度の国民経済計算年次推計、四半期速報値は2019年10-12月期の一次速報値(実質・季節調整済み)(年率換算マイナス6.3%と報道されたやつ)を用いた。


年成長率(黒線)と、四半期成長率の年率換算値(赤線)は、けっこう乖離があるということがわかる。ちなみに、「年成長率」と「四半期成長率の年率換算」の相関係数をとると0.33ぐらいになる。

最新の速報では2019年10-12月期の年率換算成長率がマイナス7.1%になったということだが*1リーマンショックの影響が出た2009年1-3月期は年率換算で-17.7%、今回と同じく消費増税があった2014年4-6月期は年率換算-7.4%だったので、今回はまあ、それらよりはマシということになる(それでも大きな落ち込みだが)。次の2020年1-3月はコロナの影響があるので、リーマン並かそれ以上いくのかも?


一方、「四半期GDPを4倍したもの」と「前の年のGDP」の比をとったのが上のグラフでいうと青い線なのだが(「前年同期比」ではない点に注意)、これは年成長率とあまり大きくは乖離していない。年成長率との相関係数も、0.93ぐらいになる。


もちろん、短期的の成長を瞬間風速的にみたい場合はもちろんあるだろうから、「四半期成長率の年率換算」に意味がないわけではない。というか、「年成長率」ですら、人によっては「短期的すぎる」指標かもしれないので、まあ要するにみる人の関心次第としか言いようがない。また、上のグラフでいう青い線のほうが優れた性質のデータだ、というわけでもない。赤と青は意味合いが異なるわけで、単に「年成長率との近さ」を知りたいなら、青い線のほうをみたほうが近くなるという話である。


重要なのは、四半期成長率の年率換算というのは、あくまで「その3ヶ月と前の3ヶ月のあいだの短期的な変動」を誇張したものなので、「年率換算」したからといって、「年スパンでのトレンド」を表しているわけでは全くないということ。まぁ当たり前だが。

上のグラフで確認したかったのは、「四半期スパンの変動と年スパンの変動はどれぐらい乖離しているのか」であって、四半期GDPをみることが役に立つか立たないかということではない。

ただ、年成長率とはあまり関係ないものを見てるのであり、4乗したところで年成長率に近くなってるわけでもないのだから、換算しなくていい気はするが。四半期の速報値から年スパンでの変化を推し量りたいのであれば、上のように前の年の年間GDPと比較するか、過去4四半期の平均をその前の4四半期の平均と比較するかすればいいんじゃないだろうか。

 

会社員時代、営業データを週次・月次・年次で報告する仕事をしてたのだが、その経験からすると、上のグラフの赤い線(四半期GDPの年率換算)のように大きくジグザグする指標は、直接モニタリングするのにはあまり向いていない可能性もある。時系列データをどういう単位でみるべきかというのは、考え方はいろいろあり、もちろん短期的なショックを検出することも大事ではある。しかし、大きく下がったあとに反動で大きく上がるような数字は、天候とか平日日数*2みたいな特殊要因に大きく左右されてるわけで、解釈がめんどくさい。というか「短期的な解釈」だけをして「トレンドとして解釈」してしまわないような注意がいる。トレンドはトレンドで別途確認するという心がけが必要だろう。

*1:上のグラフは、最新の速報の前の、「マイナス6.3%」になってる1次速報データで作っている

*2:これは四半期GDP統計では考慮済みらしいが