StatsBeginner: 初学者の統計学習ノート

統計学およびR、Pythonでのプログラミングの勉強の過程をメモっていくノート。たまにMacの話題。

文系の大学院生が就活に苦戦する理由と対策

「文系の院生」は就活で不利?

 とある就活サイトの人から、リレーブログみたいなものへの参加を依頼されたので書きました。この記事は主に企業への就職の話ですが、面接対策の部分は公務員であれ何であれ同じようなことが言えると思います。
(もう一本、研究開発職の就活に関する記事も書いてあり、そっちでは人事部の裏話的なものを載せています。)


 ちょうど1年くらい前、「『頭のいい』女子はいらないのか——ある女子国立大院生の就活リアル」という記事(リンク)にはてなブックマークが400個ぐらい付いて話題になっていた。記事は「女だから」という理由で就活で苦労するという話なのだが、ツイッターのタイムラインではなぜか、「女だからというより、『文系の院生は使えない』からだろ。とくに社会学はダメだ!」みたいな話になっていて、以下のようなまとめまで出てきていた。
togetter.com


 「文系の院卒」の就職率は相対的に悪いとよく言われる(なんか調査もあった気がする)。しかし私が経験したり見聞きしたりした範囲から言うと、後述するように「文系の院卒には準備不足な奴が多い」というイメージは多少あるものの、「優秀なのに、文系院卒であることがネックになって落ちた」みたいな例は殆どなさそうに思える。民間でもそうだし、公務員の場合なんかは全く不利にならない。


 事務職・企画職・総合職の採用面接*1でいうと、最低限のコミュニケーション能力があるかどうか、頭の回転はどうか、常識的に求められる程度の準備をしてきている感じがするか(←後述するがここで差がつくことが多い)、人柄はどうかなどをみていることがほとんどで、「文系の院生である」という肩書上のスペックで評価が下げられるという印象はない。後述するように、上がりもしないところが問題ではあるのだが。
 ましてや、社会学が何であるかについてほとんどのビジネスマンは知らないし、興味もないだろう。


 私は去年まで十年ぐらい企業*2で働いていたのだが、今は大学に転職して就活生を送り出す側になってしまった。まだ企業側の感覚もある程度残っている気がするので、今のうちに就活について思うところを書いておこうと思う。
 私は文系の学部を出て、企業で企画職・事務職を経験した後、工学の大学院を出て工学部の教員になっているという中途半端な人間で、それぞれの立場を深くは知らないので信憑性に欠ける気はするが、そのおかげでよく見えるようになったことも1つや2つはあるかも知れない。


 なおこのエントリでは、文系の修士課程に在籍する学生が事務職や企画職に応募するケースを念頭に話を進める。
 
 

「学歴フィルター」は存在する

 そういえば今年の春頃、「学歴フィルター」というのが話題になっていた。
news.yahoo.co.jp


 たとえば、リクナビやマイナビのような就活サイトにいわゆるFラン大学生として登録すると、会社説明会が「満員」で参加不可になっており、一流大学所属に変更してみると表示が「空席あり」に変わるみたいな話だ。
 実際、上の記事でも書かれているが、学歴フィルターというのは間違いなくある程度は存在している
 昔、知り合いからきいた話なのだが、企業の人事部の採用担当はリクナビとかマイナビのような就活仲介サービスを通じて、登録している学生たちに会社説明会や入社試験の案内を送ったりする。で、何年も前の話なので今はどうだか知らないが、その説明会の案内メッセージを学生に送ろうとすると1件1件いちいちリクナビ等に課金されるので*3、採用担当が確保している予算の範囲内に費用を抑えるため、適当に絞り込みを行いたいと考えるらしい。だからそのシステムも、適当に学生の属性を設定すると、その属性に該当する学生にのみ案内を送ることができる仕様になっていると聞いた。


 最近はそういう露骨な仕組みではないのかも知れないが、冷静に考えたら、何らかの形で学歴フィルタリングぐらいはされていると想像したほうがいい。
 というのも大手企業の場合、エントリーシートを出してくる学生だけでも毎年数千人になる。会社説明会の申し込みなんかはもっと多いだろう。これだけの規模になると、採用担当側からしても、初期段階でいかに効率的に学生を絞り込むかがとても重要な課題になる。その際に、とりあえず大学のランクで案内先を絞ってみようと思うのは、良いか悪いかは別にして*4、不自然な発想とは言えない。学部で絞る場合もありそうだ。もちろんそのフィルタリングのせいで優秀な人材を取りこぼすこともあるだろうが、毎年100人とか採っている企業の場合、気にするほどの影響はないだろう。
 なお学歴フィルターと言っても、偏差値の高い大学から順に優先されるとは限らない。就職人気度がある程度以上に達している有名企業は高学歴な学生から狙うのだとしても、中堅以下の企業の場合、一流大の学生ばかりを狙っても意外と来てくれなかったり、内定を出しても辞退されたり、入社しても定着しなかったりするから、あえて避けるという判断もされる。


 ところで肝心の文系院生の話に戻ると、「人数が多すぎるからとりあえずフィルタリングする」という段階で、「文系大学院在席者」を弾いている企業ってあるのだろうか?
 あるのかも知れないが、少なくとも大企業ではほぼ無いのではと想像する。私がいた会社では文系大学院在籍者がふつうに面接まで受けていたし、採用もされている。他の会社の例でも、文系院卒の社員は(大学の同級性で院進した割合とさほど変わらない程度には)見かけるし、面接に進んでいる話はもっとよく聞くから、事前に切られているという印象は、個人的には全然ない。
 
 

面接まで行けば書面上のスペックはあまり関係ない

 「文系院生」が弾かれているのかはともかく、上記のとおり説明会案内などの段階で学歴フィルターが働くことは、私は珍しくないと思っている。エントリーシート審査の段階でフィルタリングする企業も、けっこうあるかも知れない。
 ただ、とにかく面接まで進んでしまえば、「文系院生」であるかどうかは関係ないし、そればかりか大学のランクもほとんど関係ないと私は思っている。有名大学に在籍していることは多少の下駄になる(最低限の賢さを持っていると安心してもらえる)可能性はあるのだが、面接で相手の学歴を気にしながら判断するというケースは実際あまり想像できない。ましてや、「文系の大学院」に在席していることが不利になるのかどうかというと、全くならないと思う。


 というのも、技術職や研究職は別として、事務職や企画職の面接では、学生が大学で何をやってるかなんてあまり判断材料にならないのだ。
 大学での「勉強」や「サークル活動」や「アルバイト」の話は、新卒採用の面接における定番トピックではある。しかしそれは、それぐらいしか話題のない学生が多いから一応聞いているだけであって、企業で長年働いている人間からすれば、はっきりいって「全く興味ない」と言ってよい。
 この、「学生の勉強・バイト・サークルの話なんて、社会人は全く興味ない」(けどそれしか話題がないから面接で一応聞いている)というのは、文系院生に限らず全ての就活生に強く言っておきたい点だ。
 可能な範囲で、それ以外の話題を用意したほうが印象に残ることは間違いない。もし学外で何か活動していた経験があるなら、それを膨らませて話題にしたいところだ。バイトでも、金を稼ぐことではなく活動を経験することを主目的とするものなら話のいいネタになる。留学してた場合は、外国でいろいろ頑張ったという話をしておけば、無難に「ああ、あの◯◯に留学してた子ね」みたいなイメージを持ってもらえる。


 で、就職すればすぐに分かることだが、周りの社員を見渡してみると、その人が20歳そこそこの一時期に何を勉強していたかなんて関係なく、様々な仕事をして、様々な評価を得ている人がほとんどだ。だから、「大学で何を専攻してるか」とか「大学院に行ってるかどうか」が、その後の職業能力に大きく響くと思っている面接官なんて、ほとんどいないはずだ。
 ちなみに私自身は企業にいた頃から、修士の2年間であっても大学院で「研究」のサイクルを回したことがある経験は企画職においては貴重だと思っていたので、文系であっても院生・院卒に対しては好印象を持つほうで、今もそれは正しいと思っている。しかし私みたいなのは恐らく少数派だ。
 だからまぁ、大学院で学んでいることがプラスに評価されないのは非常に問題なのだが、かといってマイナスになるわけでもなく、「大半のサラリーマンのおっさんにとって、そこはどうでもいい」というのが実態ではないかと思う。
 もちろん中には「文系院生」にネガティブな偏見を持っているおっさんもいるし、学歴至上主義のおっさんもいるんだけど、そう多くはない。また、ごく普通の中小企業を受ける場合なんかは、大学院に行ってますと言うと「うちはお前がくるような会社じゃねぇ」という意味で敬遠されるケースはあると思うのでそこは注意が必要だ。
 
 

重要なのは「ストーリーをでっち上げる」技術

 就活に成功した学生の話を色々聞いてみると分かるが、「その会社を受けにきた経緯」として相手が理解しやすい手短なストーリーをでっち上げるスキルを、だいたいみんな持っている。そして、履歴書やESに書いた事柄はいずれも面接で話題になる可能性があるから、とにかくどこを突かれても「ああ、なるほどね」ととりあえず理解させる程度のストーリーをちゃんと考えている。
 これは就活において最も重要な準備だと私は思うのだが、これができていない学生はとても多い。


 「志望動機」は面接で必ず聞かれるだろう。その際、単に「御社の◯◯のビジネスに大変興味がありまして」みたいな話をしていてはダメだ。「めっちゃ興味あるんです!」みたいにその度合いをアピールしても、面接官の頭には全く入らない。また、「御社のビジネスはこういう点で素晴らしいと思うから」系の話もダメだ。これは特に気をつけて欲しいのだが、「優れた会社だから受けに来ました」なんて言われても、面接官にはまったく響かないのである。
 そうじゃなく、「あ、なるほど、そういう経緯で君はこの会社や業種を受けに来てるんだね」と思わせられるような「ストーリー」を組み立てて、志望理由を説明できないといけないのだ。「経緯」とか「エピソードのつながり」とか「話の流れ」が大事なわけ。しかしたぶん、こう言ってもわからない学生も多いだろうとは思う。うーん伝えるのが難しい……。


 志望動機のストーリーというのは、履歴書に書いた他の情報(たとえば所属している学部)とストレートに繋がるものではなくてもよい。たとえば逆に、「大学では◯◯を専攻してるんですが、実は結果的にそれにはあまり興味を持てませんでして(笑)、ここ最近はずっと個人的にこういうことを調べてて、その関連で御社の▲▲事業に関心を持ったんです」みたいに、「関係ない」ということをあえて積極的に説明するストーリーだってあり得ると思う。
 また、美しいストーリーや面白いストーリーであるかどうかは、意外と重要ではない。それよりも、「なるほど、まぁ、ありそうな経緯だな」と腹落ちさせることがまず大事なのだ。文系だろうが理系だろうが、学部生だろうが院生だろうが、学部や専攻が何であろうが、何のバイトをして何のサークルに入ってようが、とにかく「それはありそうだなと思えるストーリー」を考えることから全ては始まるのだ。


 院生だと、「大学院ではどんな研究してるんですか?」という話を振られることは文系でも多いだろう。で、研究と志望動機を結びつけるストーリーはもちろん用意しておかなければならないのだが、その内容は色々あり得る。
 「研究の具体的内容」については、あえて触れないほうが話を作りやすい場合だってある。たとえば、入社後はマーケティング調査とかをする仕事に興味ありますということにしておいて、「大学院では◯◯の研究をしてたんですが、論文を書く際に、先行研究とか公的な統計情報とかを徹夜しながら死ぬほど調べました。そういう、調べて何かを明らかにするという作業が自分は好きだし向いているんだと分かりまして〜」みたいな言及の仕方をしたっていいだろう。
 これはまぁ、企業の志望動機というより部署や業務内容の志望動機だが*5、実際に調べ物をろくにしてない人でも言えるし、会社の仕事に調べ物はつきものなので、どこの部署を希望するにしても関係なく使えそうだ。大して面白い話ではないが。


 また、「なぜ大学院に進もうと思ったのか」も聞かれる可能性は高く、そこにもストーリーが必要だ。これはぜひ覚えておいてほしいのだが、日本の文系サラリーマンは大学院がどういうところか知らないので、実際は修士課程なんて単にモラトリアムで進学しただけの院生も多いのに、「院生」=「ホンネでは研究者志望の人たち」と思い込んでいる場合がけっこうある。だから、「なぜ大学院に進もうと思ったのか」という質問は、「院生なのになぜ民間企業を受けに来てるのか」という疑問をも含んでいる。
 文系サラリーマンからみると、修士であっても「大学院生なのに民間企業を受けに来きている」ということ自体がけっこう謎というか、「よく分からない存在」になってしまっていて、これが文系院生の就活における最大のネックとなっている側面はある。だからそういう「謎」感があることを前提に、その謎感を払拭するようなストーリーを説明してあげる必要がある。
 私が文系院生だったら、自分からまず「院生なのでよく『研究者志望なの?』って聞かれるんですけども〜」という前置きをして話を始めると思う。この言い方であれば、面接官が持っている「謎」感にまず理解を示すことで、安心というか分かってる感を与えることができるし、相手が院生に対する偏見の持ち主ではなかった場合も失礼にはあたらない。その上で、「もともとは研究職というのも少し考えてたんですが、大学院に入ってから◯◯(人でも知識でもよい)との出会いがあって、民間就職したいという思いが強くなりまして〜」という話にするか、「もともと研究職志望では全くなく、修士を出たら就職するつもりだったんですが〜(何か院に行った理由を続ける)」というパターンでいくかは、人にもよるし状況次第だ。


 就活において、「謎な感じ」をなくすことは全ての出発点である。たとえば有名企業の場合、「有名だから受けに来ている」という学生も多く、採用する側もそれは知ってるからその点では謎はないのだが、「本当にうちの仕事に興味があるのか」が分からないという意味では、やはり謎である。褒められようとか、目立とうとか、そんなことを考える前に、まず「謎が残らない学生」になっておかないと、いくら頑張っても無駄である。「不思議ちゃんの未知の魅力に賭ける」みたいなことは、現実の企業ではほぼ無いと思ったほうがよい。「実はうちの社員なのではないか」と錯覚するほど違和感のない学生というのは、滅多にいるものではないが、目指すべき方向性としてはそっちである。
 
 

失敗する原因はたぶん「準備不足」

 理系に比べると、文系の場合は大学院に進学する割合が低いから、面接を受けにくる学生のなかで多少目立つとは言える。目立つということは、上で述べた「謎」感の解消もそうなのだが、「納得のいく説明を求めるポイント」が少し増えるわけで、「腹落ち」までのハードルという意味では少しだけ不利だとも言えるのかもしれない。
 しかし、たとえば面接官に「あなたは大学院で◯◯を専攻してるよね。それってうちの会社の仕事とは全然関係なさそうな気がするけど、いいの?」と聞かれて、相手に「なるほど」と言わせる回答が即座にできないのは、ハッキリいってただの準備不足だと言わざるを得ない。そして、そこさえクリアすれば何も不利ではないのだ。


 学生時代にやっていた活動の延長上にあるような企業を受ける場合は、理由を「でっち上げる」必要はない。しかしたいていの人は、1社や2社ではなく、数社から十数社(40社ぐらいという人も珍しくはない)を幅広く受けるだろうから、そういう工夫はどこかで必ず必要になる。
 そのストーリーでっち上げの工夫というのは、大して高度なものではないのだが、意外とできない人、やらない人が多い。私が就活生に一番言いたいのはこれだ。
 何か強いこだわりを持っていて、相手にあわせてストーリーをでっち上げるなんてことには抵抗があるという人もいるだろうけど、それよりは単に「いいストーリーを思いつかない」人、さらにそれよりも「そういうストーリーの準備が必要だと分かってない」人が多いように見える。


 履歴書やESというのは、面接官にどういう質問をさせたいか、面接官とどういう話がしたいかを考えて「誘導する」ように書くべきものだと学生時代に教わったのだが、たぶんそのとおりだ。これは、会社に入ってから営業提案とか社内稟議の書類を作る場合だって同じ話である。
 そしてその際に、もちろん「面白い話」や「すごい話」になっていればそれに越したことは無いのだが、それには能力や特殊な経験が必要だ。でもそれ以前にまず、「ストーリーとして流れが不自然ではない話」にする必要があり、これは準備さえすればできることなのだが、その努力をサボって脱落するパターンが半分ぐらいあるように思う。


 たとえば、ものすごくローカルな企業(や市役所)を受ける時に、「あえてその地域で就職したいと思った理由」を全く考えてなかったら話にならない。特にその地域の出身者でないのであれば、「なんでわざわざこんなところで就職するの?」と聞かれるのは当然なのであって、事前に「なるほど」と思わせる回答を考えておかないといけない。でも案外、その程度の準備もしてない就活生が、けっこうな割合でいるのだ。


 就活の面接では「コミュニケーション能力」が問われるとよく言われるが、そのアドバイスはあまり役に立たない。コミュニケーション能力なんて、短期間では大して向上しないからだ。
 それより私が言っておきたいのは、合否を分ける、コミュ力と同じぐらい重要な要素があって、それは「準備してきてる感」だ。「俺が学生だったら、このぐらいは準備して面接を受けるだろうな」という感覚的な基準が面接官の側にはあって、その水準の準備を「してきてない感」が感じられると、その学生の評価は一気に下がるのである。これについては対策が可能なのだから、気をつけてほしい。
 「入社後はどんな部署で働きたいですか」とか「競合他社ではなくうちの会社に入りたいのはなぜですか」という質問をすると、その学生がうちの会社のことをどれだけ調べて来ているかというレベルは一瞬で分かる。学生が思っている以上に、マジで一瞬で分かる。ここで一定のレベルを下回ってしまうと、どれだけコミュニケーション能力があっても高評価にはなりづらい。「いや、嘘でもいいから、そこは何か考えてからくるでしょ普通……」って思ってしまうのだ。


 こういうことは就活対策をする過程で誰かに教わったり、就活セミナーに行ってきた同級生から聞かされることが多いと思う。ただ、文系の院生は少数派=外れ者ではあって、学部3〜4年生の時にみんなと一緒にそういう「最低限の準備」をする経験をしておらず、そのせいで「準備の必要性」をあまり認識していないパターンはけっこうあるはずだ。文系院生に不利な点があるとすれば、肩書ではなく、まずそこだろう。 
  

就活はたいていの人が思うより多様

 私が書いてるこのエントリについても言えることなのだが、就活や採用というものについて1人の人間が知っている側面は非常に限られているので、ほとんどのアドバイスは話半分に聴くべきだ。
 どういう人材が求められるかは、業種によっても、職種によっても、会社の規模によっても、会社の文化によっても、その時会社が抱えている課題によっても、さらには会社内の部署によっても、その部署にいる社員のパーソナリティによっても、異なってくる。私も含めて大抵の人は、自分が知っている狭い範囲の経験に基づいて語っているのだが、だいたい人間は自分の視野の広さを過信しがちで、自分の考えが一般的に当てはまると勘違いするものなので、注意が必要だ。


 就活には、結局「やってみないとわからん」面が結構ある(スキルが絶望的に低かったり、神レベルで高かったりすると別だろうけど)。上記のような「準備」を全くしてなかったら落ちるということは分かるが、それなりの準備をしているのであれば、あとは運だと思って数をこなすしかないと思う。動いたもん勝ちというのは、けっこう正しい。


 私の印象では、準備を十分にしない学生は、数をこなすことにも後ろ向きな傾向がある。「企業の人はこう思っているはず」「私に向いてるのはこういう仕事のはず」「あの会社はこういう人材を求めているはず」みたいな思い込みを勝手に持っているせいで、選択肢を必要以上に絞り込んでしまっている。「こういう業界や職種には私は向いてない」みたいな思い込みが多くて、なかなか視界が広がってこないのだが、非常にもったいない。
 そういえば去年まで働いてた会社に、東大卒でアメリカでMBAを取った先輩がいて、その人からはいろいろ教わって勉強になったのだが、そんな人でも「この会社の中にこんな仕事があるとは、入る前は想像してなかった」みたいなことを言っていた。会社というのはそういうもんで、外から見たってよく分からないのである。
 何十年も働いている社会人ですら、自分の会社や業界以外については、どんな人がどんな仕事をしているのかなんて大して知らない。ましてや学生にそんなものが想像できるわけがない。だから、特殊な専門業種にこだわるのでなければ、ある程度は盲目になって色々受けてみるというのは大事なことだと思う。


 ところで、ついでにもう一本、就活エントリを書いておきました。こっちは文系事務職ではなく、研究・開発職の話です。
 blog.statsbeginner.net


【2018/12/10 追記】
「アカリク アドベントカレンダー2018」に掲載されました。
大学院生向けの就活情報をまとめたサイトで、けっこう役に立つのでは?
https://adventcalendar.acaric.jp

*1:「専門性を生かしたい」とか思ってる人は自分で間口を狭めてるだけだから、考察の対象外とし、ここでは「学部卒の奴らと同等に就職したい」と思っている文系院生のみを想定してるので、主に事務職・総合職の採用について考える。

*2:古臭い業界の、巨大企業。

*3:1件100円ぐらいかかると聞いた気がするけどうろ覚え。でもとにかく、けっこう高いという話だった。

*4:私自身の会社員経験では、周りを見ていて大学のランクと仕事で活躍できるかどうかはあまり関係がなかったので、フィルタリングは良いことだとは思わない。

*5:内定までの段階で部署なんか決まらないのだが、面接の話題として、どんな部署で働きたいと思うかはよく聞かれる。