以下は、分析とかではなくデータのソースについてのメモである。
人口に関する「東京一極集中」がいかに凄いかは、世銀のサイトにある以下のデータをみるのが分かりやすい。
Population in the largest city (% of urban population) | Data
主要国では、日本の30%(都市人口の30%が東京圏に集中している)というのは極めて高いほうで、G20内ではアルゼンチンの35%負けるもののそれに次ぐ2位で、3位はサウジアラビアの20%。米・独・伊・中・露などは10%未満となっている。
ただ、後述するように韓国がソウルの人口しかカウントされておらず、首都圏という概念に広げると人口の半数を占めて堂々の1位となるようだ。
しかし韓国は国土面積が日本の4分の1ぐらいしかないし、サウジは砂漠だらけの国、アルゼンチンは歴史的にもブエノスアイレスという中世以来の貿易都市に後背地の草原をくっつけて国にしたようなところだから、日本のようにある程度広い国で歴史的にも有力な地方都市がある国の状況としては、異例ではある。しかも集中率が年々上昇している。(ドイツも年々上昇しているが、そもそもの水準が日本よりだいぶ低い。)
上記データはどういう由来かというと、国連の"World Urbanization Prospects"というレポートにおいて各国の「都市人口」が取りまとめられており、この数字を元に割合を出しているようだ。
World Urbanization Prospects - Population Division - United Nations
上記ページにまとまっているデータのうち、先ほどの世銀の集中率が使っているのは恐らく、
- 各国の、30万人以上が集積して住んでいる都市圏の、都市圏ごとの人口("Urban Agglomerations"中の"WUP2018-F12-Cities_Over_300K.xls")
- 各国の都市人口("Urban and Rural Populations"中の"WUP2018-F03-Urban_Population.xls")*1
の2つで、前者のうちその国で最大のものの人口を、後者で割っているのだと思う。分母が「都市人口」であって「総人口」ではないという点に注意が必要だ。日本の場合、その都市人口というのが1億1千万人ぐらいになっていたので、ほとんど全員が都市人口にカウントされているが。
なお、計算すると小数点以下が微妙に合わない。「年初」「年末」「年中」の違いとか、センサス未実施年のデータをどうするかとかの調整の都合が何かあるのかな?(具体的には確認していない。)
ちなみに、ここでいう「都市」というのは、"urban area"と"rural area"の対比でいう前者なので、「都会」と言ったほうが分かりやすいかもしれない。
都市(urban area)の定義は各国政府によるとされ、微妙な調整法などについては下記の2014年のレポートに注記がある。
https://esa.un.org/unpd/wup/publications/files/wup2014-highlights.pdf
日本の東京圏の定義がどうなっているかというと、先ほどの"WUP2018-F12-Cities_Over_300K.xls"のNOTES 70によれば、
(70) Major Metropolitan areas (M.M.A.) are defined by the Statistics Bureau of Japan. Census figures for 2005, 2010 and 2015 refer to the Kanto M.M.A.; figures from 1990 to 2000 are based on the Keihinyo M.M.A., and figures from 1960 to 1985 are based on the Keihin M.M.A. As a reference, the population of Tokyo-to was estimated at 12.1 million persons and of the Tokyo Ku-area at 8.1 million in 2000.
とされており、時期によって定義がちがうが、たとえば最新の"the Kanto M.M.A."とは、以下のページに載っている"Kantō Major Metropolitan Area (関東大都市圏)"であろう。
Greater Tokyo Area - Wikipedia
なお韓国のソウルについては「ソウル特別市」の人口が採用されている(NOTES 355)のだが、「首都圏」という意味ではもっと広いエリアが定義されるらしく、これだと総人口の半分ぐらいが首都圏に住んでいるらしいから、日本の東京集中度(約30%)を上回ることになるだろう。
また、台湾も、台北市が首都でその隣の新北市のほうが(恐らくベッドタウン化で)人口が多いのだが、この2つを合わせると集中度は38%ぐらいになる。ただし国土面積が日本の38万平方キロに対して、韓国は10万平方キロ、台湾はわずか3.6万平方キロと狭いので、日本とは事情が違うと考えたほうがよいだろう。
ところで、研究室に飾っておくために「立体日本地図」を買ったのだが、関東平野がいかに異常な広さかということがよく分かる。昔住んでいた茨城県つくば市では、目が良ければ筑波山の山頂から東京の新宿まで見通せるというのは有名な話だった。
細かい定義を知らないが、関東平野の面積は1万7000平方キロメートルで、四国の1万8000平方キロメートルにほぼ匹敵する。
こんなに広い平地は北海道にすらなく、要するに日本の国土というのは、「殆どが山であり、点々と平野があってそこに都市が発達してきたが、関東にだけ四国と同じ広さの巨大平野がある」という構造になっている。
平野の定義がよくわからないのだが、以下のページに載っている都道府県別の地形・傾斜別面積をみると、関東1都6県の「丘陵地」「台地」「低地」面積を合わせると1万8,571平方キロメートルになる。
日本全体では13万7,768平方キロだから、だいたい平野の13.5%が関東地方にあるということになる。
以下のページの「自然環境」のデータをみると都道府県別の可住地面積が分かるのだが、日本全体では12万4,038平方キロメートルであるところ、関東1都6県で1万8,261平方キロメートルなので、こちらは14.7%が関東にあるということになる。
社会・人口統計体系 統計でみる都道府県のすがた2018 | ファイルから探す | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
最初にあげた東京一極集中率の30%には、茨木・栃木・群馬などは含まれない*2はずだから、東京・千葉・神奈川・埼玉の1都3県の可住地面積が全国に占める割合を見てみると、だいたい7%ぐらいだ。
関東平野が恐ろしく広いとは言え、7%の可住地に30%の人が住んでいるのは、やはり偏っているようには思える。しかし関東平野全体ではまだ余力があるとも言えるので、北関東へのアクセスが劇的に改善した場合、さらに尋常ではない都市圏が形成されるという可能性もあるのかもしれない。